家庭で実践できる嚥下障害のテストです

反復唾液嚥下テスト(Repetitive saliva swallowing test , RSST)は、家庭でも簡単に実践できる、安全な嚥下障害のスクリーニングテストです。

準備するもの

ストップウォッチ

手順

  1. 人差し指を舌骨(顎の下のでっぱり)、中指をのど仏に当てます。
  2. その状態で「これから30秒間に、できるだけ多くつばを飲み込んでください」と患者に指示し、ストップウォッチで計測しながら、30秒間に何回唾を飲み込むことができるかを観察します。

結果と判定

唾を飲み込んだ際に、のど仏が指を十分に乗り越えた場合のみ、1回とカウントします。そして、30秒間で嚥下の回数が3回未満であれば誤嚥の疑いありと判断します。

回数 判定
3回以上  誤嚥の疑いなし
0回~2回  誤嚥の疑いあり

嚥下障害者では、この反復唾液嚥下テストをすると、嚥下の繰り返しに要する時間が延長すると報告されています。感度0.98、特異度0.66と報告されており、30秒間に唾液嚥下回数が3回以上の成績であれば、誤嚥の可能性は非常に低いといえます。
しかし、3回未満の成績のなかにも健常者がいる可能性があるので、注意しなければなりません。

対象者

自分で唾液を飲むことができる認知機能がしっかりした人です。
重度の認知症や注意障害の方は、自ら唾液を飲めても、それを30秒間繰り返す努力ができない場合があります。 また、重度の意識障害の方は指示が伝わらなかったり、口腔顔面麻痺がある人などは、意図的に唾液を飲み込めないことが多いため、反復唾液嚥下テスト(RSST)の対象外となります。

テストの注意点

●反復唾液嚥下テスト(RSST)はあくまでスクリーニングテストです。 30秒間に空嚥下が3回未満の場合は、病歴や、身体所見を確認し、そのうえで必要な場合には嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査を行うようにします。

●反復唾液嚥下テスト(RSST)実施前には唾液の誤嚥の可能性を考慮して、口腔ケアを行ったほうが良いです。口腔内が乾燥している場合は、嚥下が難しいため、口腔ケア等で、適度に口腔内を湿らせた後に実施するようにします。

●反復唾液嚥下テスト(RSST)で、報告されている感度、特異度は、原法を30秒間実施した結果となります。時間を短縮すると、報告されている感度、特異度が適用できなくなるため、30秒間は必ず実施してください。後半、嚥下しなくなる原因としては嚥下障害、口腔内乾燥、注意障害など、さまざまな原因が考えられますので、詳細な病歴、身体所見を確認し、ほかの評価結果と照らし合わせて検討するようにします。

●空嚥下をしようと努力したとき、舌骨・喉頭がわずかに挙上することがあり、それをカウントしないように注意する必要があります。甲状軟骨が指を十分に乗り超えた回数のみをカウントするようにします。

以上、反復唾液嚥下テストについて述べましたが、利点としては、簡便かつ安全に行うことができます。一方、欠点はある程度の認知機能が保たれていないと、正確さに欠けるという点です。
しかし、このテストの手法を覚えておくことで、誤嚥性肺炎の予防に大きく役立ちます。