誤嚥性肺炎を防ぐ「ミールラウンド」

摂食嚥下障害をもっている高齢者は近年増加しています。
特に、肺炎を起こして医療機関を受診した際に「摂食嚥下障害があるために起こった誤嚥性肺炎である」と診断されるケースが多いと言われます。

誤嚥性肺炎は、決してまれな病気ではなく、全国で毎年約10万人の方が亡くなっている病気です。国民病と言っても過言ではありません。
ですが、認知度が低く、診断が下った際にご家族が初めて誤嚥性肺炎という言葉に出くわすことも珍しくはありません。

しかしながら、肺炎になって初めて気付く方が多いため、重症化しやすいのも大きな特徴です。よって、肺炎まで起こさずに早めに対処することができれば、もっと多くの方の健康を守ることができます。

しかし、食事場面だけを見て医療機関を受診するのは、ハードルが高いと言わざるを得ません。
これを解決するのが「ミールラウンド」というものです。

ミールラウンドとは

ミールラウンドとは、歯科医師、看護師、言語聴覚士、栄養士などの多職種の専門家が、実際の食事場面を通じて摂食状況を見て回ることです。

具体的には、

  • ムセはないか
  • 食べこぼしはないか
  • 傾いて食べていないか
  • 食欲はあるか

といった、細かいポイントをチェックしていきます。
また、多職種の専門家で協議を行い、1か月の体重変動や血液検査の状況から栄養状態などを総合的に判断し、栄養状態の悪い方や、摂食状況が気になる方がいれば、どのように改善していくかなどを話し合います。

これにより、摂食嚥下障害の初期段階の発見が可能になります。
もしここで摂食嚥下障害が進行していてば、医療機関にてさらに詳細を検査することになるので、ミールラウンドは重要な検査の一つと言えるでしょう。

このように、ミールラウンドは摂食嚥下障害を発見する場であると同時に、誤嚥性肺炎予防には欠かせないものです。また、ご家族に対しても、普段からどの点を注意して観察すればよいのかを、具体的に示す重要な場でもあります。

したがって、施設や家庭においても、歯科医師がミールラウンドを行う機会がさらに増えれば、誤嚥性肺炎の予防につながると考えられます。