逆流性食道炎とは

誤嚥性肺炎を起こす原因として、摂食嚥下障害以外に「逆流性食道炎」いう病気があります。
昔からよく、胃もたれしたらこの薬、といったコマーシャルがありますが、食べすぎや飲みすぎであればだれでも胸やけや胃もたれを感じることと思います。

しかし、これが日常的にある場合は異常であると言えるでしょう。つまり、食事をすると胸やけがしたり、胃もたれがしたり、ゲップの回数が増えたり、のどに違和感があったりするのは「逆流性食道炎」の兆候かもしれません。

逆流性食道炎とは、本来であれば逆流してこない胃液や胃の内容物が食道に逆流し、食道に炎症を起こして様々な症状を起こす病気です。

逆流性食道炎の原因

食道と胃の境には、噴門と呼ばれる逆流を防ぐ役目の弁があります。噴門部は通常閉まっており、食べ物がこの噴門部に来ると、下部食道括約筋という筋肉が緩むことで胃に食べ物を送り込んでいます。そして食べ物が通過してしまえば、この筋肉は収縮し逆流することはありません。

ではなぜ逆流が起こるのでしょうか。
それには2つの理由があり、「物理的な破壊」と「制御不能」があります。

まず、「物理的破壊」は胃癌の出術などによるものと、加齢により起こる場合があります。特に加齢による場合は高齢者に多いのですが、これは食道は筋肉で構成されているので、筋肉が年を取ることで衰えて、萎縮してしまうことで逆流を防ぐ弁の働きも衰退するわけです。

「制御不能」とは食べすぎや飲みすぎ、肥満や姿勢が悪いことによる胃の圧迫などがあります。特に、円背と呼ばれる背中が曲がってしまっている場合には、逆流性食道炎が起こりやすくなっています。

食道裂孔ヘルニア

この病気は、逆流を防ぐ機構が破壊された状態になります。これには加齢や肥満、姿勢の悪さなどが原因にあります。

胸部と腹部は横隔膜という筋肉素組織で隔てられており、この横隔膜には食道や動・静脈が通るための穴が開いています。これが「食道裂孔」です。食事をした際に食べ物はまず胸部にある食道を通り、逆流防止装置弁である噴門を経由して腹部にある胃に達します。

ところが、横隔膜の下部(腹部)にあるはずの胃の入り口の一部が横隔膜の上に飛び出すことがあります。これが「食道裂孔ヘルニア」です。この食道裂孔ヘルニアがある人は、食道に炎症を起こしやすいため、逆流性食道炎になりやすいのです。

逆流性食道炎の症状

逆流性食道炎の症状には以下のような症状がありますので、チェックしてみて下さい。

  • 胃痛
  • 胃もたれ
  • ゲップ
  • 胸痛
  • 呑酸(酸っぱいものがこみ上げる)
  • おなかの張り
  • のどのひりひり
  • 胸やけ


逆流性食道炎の合併症

逆流性食道炎を放置すると、以下のような合併症状が現れることがありますので、注意が必要です。

  • 誤嚥性肺炎:逆流した胃液や内容物を誤嚥して起こる
  • 食道癌:炎症が慢性的に起こりそれがもとで粘膜が癌化する
  • 貧血:潰瘍から出血する
  • 中耳炎:逆流した胃液が耳管に侵入して起こる
  • う蝕:逆流した胃液中の酸が歯を溶かして起こる
  • バレット食道:食道の軟膜が変性し、これにより食道癌のリスクが高まる。


逆流性食道炎のケア

逆流性食道炎は薬剤でほぼ抑えられます。しかし、あくまで対処療法であり、根本的には胃と食道のしくみを改善しなければなりません。そこで、再発しないようにするためには、生活習慣及び食習慣の見直しが必要となります。

具体的には、食べすぎや飲みすぎに気を付け、よく噛んでゆっくり食べること。また、寝る前には食べないなどを遵守してください。さらには、過度な喫煙や飲酒は控え、肥満にならないように運動をすることも大切です。

これ以外にも消化吸収の良い食べ物を摂り、高脂肪、辛い物や熱い物、カフェインや酸味の強い物などはできるだけ避けた方がよいでしょう。

非びらん性胃食道逆流症

逆流性食道炎の症状はすでに述べましたが、これらの症状がある場合には医療機関で検査すれば炎症が見つかるため、すぐに対処できます。しかし、症状があるのにも関わらず、内視鏡検査やPH検査をしても、炎症は発見されず薬が効かないことがあります。こういう場合に考えられるのは「非びらん性胃食道逆流症」という病気です。

この病気は脳と自律神経の仕組みの異常から生じると言われています。そして最大の問題点は薬の効果がないということです。原因としては、思春期、更年期、老年期の脳と神経のネットワーク異常、過度の緊張、疲労やストレスなどが考えられます。この非びらん性胃食道逆流症には漢方薬が効果があるようです。

まとめ

同じような症状で、炎症性反応がある逆流性食道炎と炎症性反応のない非びらん性胃食道逆流症(NERDナード)を合わせて胃食道逆流症(GERDガード)と呼びます。これらは放置しても治癒するわけではなく、様々な合併症を併発します。それぞれ治療法は異なりますので、気が付いたら早めに専門の医療機関を受診することをお勧めします。