肺炎は日本人の死因第4位です

肺炎と聞くとどんな症状を思い浮かべますか?熱が息をするのも苦しいとか、咳が出て気管支の辺りが痛いとかだと思います。若い人にとって、肺炎はそんなに重い病気であるという認識がないのではないでしょうか?確かに若年者では肺炎で命を落としたというのはあまり聞かないでしょう。しかし、その肺炎が日本人の死因のがん、心臓病、老衰についで、第4位であるとご存知ですか?なんと年間約13万人の方がこの肺炎で亡くなっています。その頻度は日本全国で実に10分に1人の割合なのです。肺炎というと、外から肺にばい菌が侵入してきてなると思っているのではないでしょうか?確かにそういうケースも見られます。しかし、大半はそうではありません。

肺炎のイメージ

誤嚥性肺炎が起こるメカニズム

肺炎には2種類あり、通常の肺炎と誤嚥性肺炎というものです。この誤嚥性肺炎という言葉聞いたことがあるでしょうか。誤嚥とは誤った飲み込み(嚥下)をしてしまうことです。つまり、本来食道に入る食べ物や唾液などが間違えて、気管を経て肺に入ってしまうことです。本来気管は空気の流通する器官ですから、それ以外の異物は受け付けないのです。そして、この誤嚥により肺が炎症を起こすのが、誤嚥性肺炎です。誤嚥してしまうと必ず肺炎を起こすかというと、そうではありません。みなさんも極まれに食べ物が気管に入ってしまった経験があると思います。そのときに、大きく咳き込んだ覚えがあるでしょう。
そうです、誤嚥してしまうと、気管はその異物を外に押し出すために、咳をするのです。これが防御機構なのです。

高齢になってくるとこの咳き込む力が弱まってきます。この結果、入ってしまった物を外に出すことができずに、肺の中に溜まり、ばい菌が感染してやがて肺炎を起こします。これが誤嚥性肺炎の起こるメカニズムです。ですので、若い人の場合は咳き込む力があり、免疫能力も高いため誤嚥性肺炎は起こりにくいのです。

一日嚥下(飲み込み)を約600回行なう

また、誤嚥性肺炎は唾液誤嚥といって食べ物でなくて、唾液を誤嚥して肺炎になるケースが実は多いのです。これは、唾液中には何兆という、ばい菌が存在していて、これを寝ている間に誤嚥して肺炎を起こすのです。ですから、寝ている時に咳き込んでいるというのは、唾液を誤嚥していることもあるのです。さらに高齢者に誤嚥が多いのは、飲み込む大切な器官である咽頭の感覚が鈍ってくることも原因となっています。

私達は一日嚥下を約600回行っています。これはのどに唾液や食べ物が流れて来ると、脳の神経が反応して嚥下反射が起きます。もちろん自然に起きることもありますし、意識して起こすこともできます。しかし、認知症があるとか、脳梗塞を起こしたことがあるとか、それらがなくても脳細胞の信号が伝わりにくくなると、咽頭に水分や物が溜まっても、嚥下反射が起きないのです。このように咽頭の感覚が鈍感になってきて、寝ているとさらに神経が静まって嚥下反射が起きない状況で、唾液を誤嚥します。

正しい情報で予防イメージ

誤嚥性肺炎を予防するために正しい情報を

では、誤嚥性肺炎は防げないものなのでしょうか?そんなことはありません。本人だけでなく、家族や医療従事者など、周囲の人が誤嚥性肺炎の知識を吸収し、悪化する前にちょっとした変化をみのがさないことです。ところが、誤嚥性肺炎とはどういうものかに始まり、初期にはどういう症状が出るのか、また気付いたら誰に相談すればよいのかなど、なかなか正確な情報が得られません。

私もそういう情報を得たいと思い、様々なサイトや情報誌などを探しました。断片的にはあるのですが、まとまった情報を得ることができませんでした。そこで、私達は誤嚥性肺炎に気付かずに苦しんでいる方やその家族に、有益な情報の提供をし、またその相談機関である医療機関向けにスキルを身に付けてもらうために、日本誤嚥性肺炎予防協会を設立しました。今後ますます高齢化が進む我が国において、健康寿命を伸ばす一助になればそれが望外の喜びであります。

どうか当協会をご活用いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。