不顕性誤嚥どういう病気なのか
人間は通常、誤って飲食物や唾液を気管内に入れてしまう(誤嚥)と、せき込んだり、むせたりして異物を外に押し出そうとします。
これを顕性誤嚥といい、誤嚥性肺炎にならないための防御機構だと考えられています。
ところが、異物が気管内に侵入しても、むせることがない場合があります。これを表からわからない、つまり顕在化しないという意味から、不顕性誤嚥と呼びます。
不顕性誤嚥は、異物が気管に侵入したとしても、その感覚があまりなかったり、せき込む力が弱かったりしたときに起こるもので、嚥下障害の進行した状態と言えます。
不顕性誤嚥は症状が見られないため、いつも一緒に生活している家族でさえ見逃してしまい、重篤化してしまう怖い状態です。
よって誤嚥性肺炎を予防するためには、この不顕性誤嚥をいかにして早期に発見できるかが鍵となります。
これには専門機関での検査が必須となります。
家庭でできることは口腔ケア
では、不顕性誤嚥があると診断された場合、またそうかもしれない場合、家庭でできることは何でしょうか?
一つ目の大切なのことは、口腔ケアです。口腔内には善玉菌も多いですが、歯周病を発症する悪玉菌もまた非常に多く生息しています。
これらの悪玉菌(歯周病菌群)は肺炎の原因菌となります。よって、これらの菌をコントロールすることが、誤嚥性肺炎を予防する重要なことなのです。
よく、口腔ケアというと、ただ歯磨きをすることだという認識がありますが、舌には舌苔(ぜったい)という歯垢と同じ細菌の塊が付着しています。また、頬粘膜や義歯にも同じように歯周病菌群は住みついています。よって、歯や舌、頬などの粘膜、義歯をきれいにすることを総称して口腔ケアと呼ぶのです。
その他のケア・予防方法
また、口腔ケア以外にも、現在服薬している薬の中で、嚥下機能を低下させる薬剤(例えば睡眠薬や向精神薬)があれば、主治医と相談の上で減量または中止を検討しましょう。
さらに栄養状態や脱水の改善、日中に軽い運動して基礎代謝を上げておくなど、肺炎になりにくい体を普段から作っておくことも重要です。
もし、逆流性食道炎による誤嚥が疑われるときは、食後2時間は横にならないようにしたり、就寝時に上半身を少し挙げておくと効果があります。
肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの実施は、肺炎の発症を抑えたり、肺炎が重症化するのを防ぐと言われています。そして、シロスタゾール、葉酸、半夏厚朴湯などは誤嚥性肺炎の予防効果がある薬剤も検討します。
結論
以上の述べたように不顕性誤嚥を予防し、また早期に発見することが誤嚥性肺炎にかからないための最大のテーマと言えるのではないかと思います。