胃瘻とは、胃の中に穴を空けて栄養剤を注入する瘻孔のこと
胃瘻とは、胃の中に穴を空けて栄養剤を注入する瘻孔のことです。そして、経腸栄養の投与経路及び減圧目的のために、内視鏡を使用し胃瘻増設をすることをPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy :経皮内視鏡的胃瘻増設術)と言います。
適応症
- 神経難病や脳血管障害により経口摂取が困難である場合
- 経口摂取できても反復性誤嚥性肺炎を惹起する場合
- 腫瘍などにより咽頭・食道・胃噴門部が狭窄している場合
- クローン病などにより長期的に栄養を確保する必要がある場合
減圧胃瘻
減圧目的の胃瘻は、癌性イレウスに対するドレナージチューブとして使用されます。これにより、患者は鼻からイレウスチューブを長期的に留置されることから解放されます。
PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy :経皮内視鏡的胃瘻増設術)の目標は「再度、口から食べてもらうこと」
1.経口摂取再開
PEGを増設するともう経口摂取ができないと思っているご家族の方がいますが、そうではありません。それどころかPEGのゴールはむしろ「再度、口から食べてもらうこと」です。
北海道長沼町立病院の報告によりますと、216例中35例(16.2%)で何らかの経口摂取が可能となりました。さらに、このうち重度遷延性意識障害135例を除くと、81例中35例(43.2%)と約4割強の患者で経口摂取が可能になりました。
2.訓練できる体力をつける
上記の経口摂取再開に向けて必要なことは、訓練に耐える体力をつけることです。栄養補給ができていれば、自然と経口摂取ができるというわけではないため、摂食機能訓練が必要になります。訓練すればエネルギーは消費されますので、その消費を補うだけのエネルギー量が必須となります。体力を増強するためのエネルギーを、PEGから摂取するという仕組みです。
TPN(中心静脈栄養)との相違点
経口摂取が難しい場合には、PEG以外に点滴で栄養補給を行う中心静脈栄養を選択することがあります。しかし、画期的な方法として脚光を浴びたものの、様々な問題点があります。その問題点を下記に列挙します。
- 感染の門戸が拡大される(刺入部部位から敗血症になる)
- 胆嚢が機能しないので、胆石ができやすい
- 医療費が高価
- 腸管が萎縮し腸管免疫機能が低下する
経口摂取が困難な患者に対する他の代替栄養法はそんなに多くありません。その中でも胃瘻は将来を考慮しても良い栄養法であると位置づけられるのではないかと思います。しかし、気を付けなければならないのは胃瘻に移行してしまうと、安定しているからという理由で、漫然と胃瘻を続けることになりかねません。したがって、摂食嚥下障害にたずさわる職種の方々はいつでも経口摂取の可能性を追求することが役割であると自覚する必要があると思います。