高齢者の誤嚥性肺炎の原因

誤嚥性肺炎は、食物や唾液などが誤って器官を通して肺に侵入し、細菌感染を起こして肺に炎症を起こすことを指します。飲み込む力が弱くなった高齢者の方に多く見られます。その原因と予防を解説します。

高齢者は咳反射及び嚥下反射が低下する

  1. 脳梗塞
  2. 廃用症候群(寝たきりからなりやすい)
  3. 免疫機能の低下

口腔内の異常

  1. 歯垢や歯石の付着
  2. 口腔乾燥
  3. 義歯不適合
  4. 舌の運動異常

予防するには?

正しい口腔ケアを行いましょう

口腔内には、歯周病菌やカンジダ菌など、身体に影響を及ぼす菌が数多く生息しています。これらを極力除去しておく必要があるため、普段の歯磨きは必須なのですが、それだけでは不十分です。定期的に歯科受診をし、口腔ケアをしっかり行うことが大変重要になります。

食物を誤嚥して誤嚥性肺炎を生じることもありますが、それよりも唾液中の雑菌を無意識に誤嚥(不顕性誤嚥)してしまい、誤嚥性肺炎を起こすことがとても多いのです。つまり、口腔内が清潔に保たれていれば、誤嚥性肺炎のリスクは低下するのです。

歯を磨くシニア女性

生活習慣病の予防

生活習慣病を予防することは大変重要です。特に動脈硬化を予防することがADL(日常生活動作)を下げない秘訣と言えます。誤嚥性肺炎には種々の原因がありますが、「かくれ脳梗塞(ラクナ梗塞)」が嚥下反射機能を低下させることがあります。また、脳梗塞や脳出血の後遺症などにより、のどの咳反射機能を低下させることで、誤嚥性肺炎を起こしやすくしてしまうことがあります。

このかくれ脳梗塞はあまり症状が出ないため一見わかりにくいのですが、もし大脳基底核の血管に起こると、咽頭部に麻痺が起こり、反射機能の低下から肺炎になりやすくなるのです。

かつては、加齢とともに各種の反射(特に咳反射)、嚥下反射が低下し、誤嚥性肺炎が引き起こされると考えられていました。ところが、最近の研究では、健康であれば高齢者でもこれらの反射は低下しないと報告されています。しかし、「かくれ脳梗塞」を起こしてしまうと、反射が低下し、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。そして、この誤嚥性肺炎は反復しやすいのが特徴です。これらのことから、日頃より動脈硬化などの生活習慣病の予防は大変重要になってきます。

葉酸を補給しましょう

緑黄色野菜イメージ

葉酸とは、水溶性ビタミンでビタミンB群に属します。植物の葉に多く含まれ、黄色結晶で光や熱に不安定な物質です。ビタミンB12とともに赤血球を作るので「造血のビタミン」といわれています。葉酸はレバーや緑黄色野菜に多く含まれています。

誤嚥性肺炎の予防にはまず、咳反射や嚥下反射機能を低下させないことが重要です。これらの反射の低下には、大脳基底核における、ドーパミンという物質の産生が関係することがわかっています。ちなみにドーパミンとは中枢神経系に存在する神経伝達物質で、運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わる物質です。

さて、このドーパミンの産生が低下の原因として葉酸欠乏が挙げられます。つまり、葉酸が不足すると、ドーパミンが産生されにくくなり咳反射や嚥下反射機能が低下し、ひいては、誤嚥性肺炎を発症しやすくなるのです。

妊娠時の葉酸不足はよく指摘されていますが、高齢者でも葉酸は欠乏しやすいため、栄養不足になります。また、経鼻経管栄養や中心静脈栄養になるとさらに欠乏していきますので、できるだけ経口摂取で葉酸欠乏にならないように注意が必要です。