「口腔ケア」という言葉をよく見かけるようになりました。でも、本来の意味を知っている方は、意外に少ないのではないかと思います。そこで、今回は口腔ケアについて、何回かに分けてお話をしていきます。
口腔ケアは誤嚥性肺炎予防にとってはとても大切な予防法です。文献によると口腔ケアを行うことで、4割の方が予防できると言われています。したがって、特に高齢者に対する口腔ケアの役割は、成人に対する役割と違います。口腔ケアをすることにより、歯だけでなくその他の口腔内の残存機能を活性化させる役目があります。それにより、「食べる」「話す」「呼吸する」という人間本来の基本的な機能の回復を図ります。これが結果的に誤嚥性肺炎予防や栄養状態の改善を図ることになるのです。
単に口腔ケアと言っても色々あり、広い意味では口腔が有しているあらゆる働きを健全に維持し、介護することを指します。また、狭い意味ですと、口腔衛生管理を目的とした口腔清掃や義歯の清掃を指します。
口腔ケアの重要性についてはご理解いただけたと思いますが、それでは口腔ケアは誰が行うものなのでしょうか?これついては、その人その人の環境や背景でだいぶ違います。一般的にはまず自分で行っていると思いますが、認知症や脳血管障害などにより、自分で行うのが困難な場合には、まず家族やヘルパーが行うことになると思います。しかし、本人及び家族やヘルパーが行う口腔ケアはいわゆる歯磨きという部類になると思います。もちろん、おおよそはこれで良いのですが、誤嚥性肺炎予防や栄養状態の改善など全身的な観点からみれば、やはり歯科医師や歯科衛生士に行ってもらう専門的口腔ケアが必要になります。
病院や施設、在宅で療養生活を送る方の多くは、セルフケアを十分に行えな状況にあります。こういう方は誤嚥性肺炎を含めた全身的な病気の合併症に危険性があり、専門的口腔ケアが必要となります。専門的口腔ケアとは、難しく言うと、歯科保健医療の専門職が行う「口腔保健指導」「専門的口腔清掃」「口腔機能維持・回復のための指導、助言、歯科口腔領域の介護支援」などの技術のことを言います。この専門的口腔ケアを行うことで、歯周疾患、舌炎、義歯性口内炎、誤嚥性肺炎などの呼吸器系感染症を予防し、さらに脳梗塞や脳出血などの後遺症にみられる口腔機能障害の改善をもたらすこともできます。
このように口腔ケアと言っても、誰が行うかによりその人のADLやQOLが変わってきます。セルフケアが困難な方はやはり、専門家である歯科医師に相談してみるのが一番良いと思います。