口腔ケアとはどういう意味かを前回お話しいたしました。それでは、なぜ口腔ケアを行うことが良いのでしょうか?
1)誤嚥性肺炎の予防につながります
誤嚥性肺炎は高齢者にとって本当に怖い病気です。まかり間違えれば、命を奪ってしまいます。この誤嚥性肺炎を予防する一つの方法に口腔ケアがあります。全国11か所の介護老人保健施設の入所者を対象に、歯科医師や歯科衛生士が行う専門的口腔ケアを実施した群と本人または介護者による今まで通りの口腔ケアを行った群に分けて、肺炎の調査をしたデータがあります。これによると、発症率及び発熱発生者数、肺炎発症者数、肺炎死亡者数に明らかな違いが認められています。
2)要介護高齢者の栄養改善につながります
栄養状態が悪くなるとどうなるでしょうか?人間は栄養を摂取することで日常の生活を支えています。特に、高齢者は顕著です。栄養状態が悪くなると、元々ある病気の治りが悪くなり、合併症が増加します。さらには入院期間が長くなり、死亡率が高くなることが知られています。ある調査によると、介護老人保健施設に入所する方を対象に、口腔ケアとともに食環境の改善を行ったところ、対象者全員は栄養状態の指標を指す血清アルブミンの値が優位に上昇し、栄養状態の改善が見られました。
3)咽頭の細菌数が減少します
調査によると、寝たきり度が高いほど発熱傾向が強く、咽頭部の総細菌数が多いと報告されました。介護老人福祉施設で入所者に積極的に口腔ケアをする群と従来通りの口腔ケアをする対象群の2群び分けて、咽頭部の総細菌数を比べてみたところ、積極的に口腔ケアをする群の方が、約5か月後には約10分の1になったそうです。これらかすると、口腔ケアを行うことで咽頭部の細菌数が減少し、誤嚥性肺炎予防につながっていると予想されます。
4)要介護者の認知機能改善があります
介護老人福祉施設10施設に入所者のうち、専門的口腔ケアを行った群と行っていない群を比較した結果、専門的口腔ケアを行った群の方が明らかに認知機能の低下抑制されたとの報告がありました。どういう理由で、このような結果になったかまではわかりませんが、口腔ケアの重要性が示されています。
以上からすると、口腔ケアは口の中だけでなく全身にも影響が及ぼされることがわかってきているという証拠ではないでしょうか。