2018年、日本呼吸ケアリハビリテーション学会による呼吸リハビリテーションに関するステートメントでは誤嚥性肺炎についての記載がある。ステートメントのまとめとリハビリテーションの視点から誤嚥性肺炎の予防について考える。
 高齢者肺炎の病態の多くは誤嚥が契機となる誤嚥性肺炎である。特に脳血管障害や胃食道逆流等に起因する不顕性誤嚥(特に唾液誤嚥)がその発症に深く関与する。介護を必要とする高齢者、長期療養病床群もしくは介護施設に入所する患者が発症する医療・介護関連肺炎の多くは誤嚥性肺炎である。摂食嚥下障害を合併する場合、必要であれば摂食嚥下リハビリテーションの介入と評価が必要となる。特に言語聴覚士の役割が重要となる。呼吸器疾患に伴う摂食嚥下障害の特性に基づいたリハビリテーションの介入手法は今後さらに検討される必要がある。また、肺炎は単に肺炎を治療するだけではなく、全身管理と同時進行で再発予防に努めることも求められ、最適な介入手法が確立される必要がある。摂食嚥下機能の向上および維持には定期的な評価と目標設定に基づいた段階的摂食練習(体位、食事形態、介助方法の段階的選択)と中心とした摂食嚥下リハビリテーションも不可欠であるが、呼吸リハビリテーションがどのような形でかかわるかは今後の課題となる。

 誤嚥性肺炎での入院患者に対して、リハビリテーションチームでは、身体機能の評価や嚥下機能の評価に基づき、食事の体位を検討している。食事の体位は、車いすに座れる方は座位での摂取を目指しているが、車いす座位が難しい方に関してはベッド上で頭側を上げてクッション等で姿勢を整えた姿勢での摂取を選択する。また最近、一部の病院やごく限られた施設で座位での摂取では誤嚥のリスクが高い方に対して、側臥位(横向きで寝ている姿勢)で食事摂取を評価する場合がある。誤嚥のリスクをなるべく少なくした中で、口から食べることを目指している。このように誤嚥性肺炎を予防するためには、リハビリテーションチームで検討した体位を在宅でしっかり守ることが大切になる。そのためには、誤嚥性肺炎で入院した場合に病院側から食事に関する指導を患者やその家族、施設のスタッフなどにしっかりすること、また、その指導に対して患者、家族、施設スタッフの理解とその協力が欠かせない。誤嚥性肺炎を繰り返して入院する方では、食事の介助方法が守られていない、患者の理解が不十分である症例などを多く経験されるため、情報の共有がより重要となるだろう。