高齢者に多い誤嚥性肺炎は、発症前から加齢による嚥下機能の低下である「老嚥」を認めることが多い。治療に伴う、禁食や安静が加わると更に嚥下機能は低下しやすい。誤嚥性肺炎では入院に伴いサルコペニアを進行しやすい。サルコペニアとは「加齢」「活動の低下」「低栄養」「侵襲・炎症」を原因とした、全身性の筋肉量の低下と筋力、身体機能の低下である。このサルコペニアが進行すると、サルコペニア嚥下障害に至り、誤嚥性肺炎を繰り返すという悪循環が生まれる。そのため、サルコペニアの原因と予防に対する知識を持ち、適切な栄養摂取とリハビリの介入をすることが生活の質の低下の予防につながる。
さて、サルコペニアの原因として述べた4つのうち、「低栄養」「活動の低下」に対するアプローチは病院のみならず、在宅の場面でも大事である。今回はこの低栄養について触れていく。

「低栄養」の評価としては、栄養評価にはいくつか評価方法があるが、在宅場面では、十分な食事摂取量をとれているか、最近の体重の減少がないかなどを確認するとよい。家族や介護者は、1週に1回程度、対象者の食事量が最近減ってきていないかを確認し、数週~1か月に一回程度、入浴時などの決まった時間に体重を測って減っていないかを確認するのがよいだろう。食事摂取によるエネルギーが、消費エネルギーよりも少ない場合は体重が減っていき、多い場合は体重が増加していく。そのため、十分に食事がとれていることは非常に大切である。継続して体重が減っていると注意が必要である。体重のみで考えると、体重を身長の二乗で割った値であるBMIが、「70歳未満では18.5」「70歳以上では20」を下回る場合、低栄養のリスクとなる。
「低栄養」に対するアプローチとしては、栄養療法である。痩せている方に関しては、高エネルギー、高蛋白質を意識した食事メニューとし、体重の増加を目指す。最低でも体重を維持出来ているかを確認する必要がある。食事のみでのエネルギー摂取が難しい場合、間食を取り入れることがよいだろう。また、薬局などで栄養補助食品として飲料などもあるため、経済的な面や好みを考慮して可能な部分は取り入れるとよいと思われる。
誤嚥性肺炎で病院に入院している間は、病院で決まった食事メニューが提供されるため、摂取エネルギーは把握しやすい。また専門スタッフによる栄養評価も可能であるが、在宅や施設などでは病院のような管理は難しい。そのため、簡便に評価が可能である、食事量や体重の変化には注目してほしい。