サルコペニアとは「加齢」「活動の低下」「低栄養」「侵襲・炎症」を原因とした、全身性の筋肉量の低下と筋力、身体機能の低下である。このサルコペニアが進行すると、サルコペニア嚥下障害に至り、誤嚥性肺炎を繰り返すという悪循環が生まれる。この点は別の記事でも述べたが、今回はサルコペニアの原因の中でも「活動の低下」について触れていく。


誤嚥性肺炎の急性期では、呼吸困難や発熱に伴い、入院すると安静臥床の期間がある。安静臥床では廃用症候群、呼吸障害、嚥下障害をまねくため、早期からのリハビリテーションにより出来るだけ早く安静を解除し、症状に合わせて、車いすに乗るなどの離床を図る。
サルコペニアの原因である低栄養に対して栄養摂取が大切であるが、栄養摂取に運動を組み合わせるのがリハビリテーション栄養の考え方である。この運動というのは、上記の安静を解除するための離床ではなく、その先の筋力や体力を向上させるための筋力訓練や有酸素運動を指すことが多い。離床は安静・ねたきりを防ぎ活動の低下によるサルコペニアを引き起こさないために大切であるが、筋力訓練や有酸素運動はサルコペニアを改善させたりサルコペニアにならないよう予備能力を向上させるために役立つ。そのため、誤嚥性肺炎のリスクがない健常人にも必要な考え方である。
誤嚥性肺炎を繰り返している人はこれ以上、呼吸障害や嚥下障害を進行させない、もしくは可逆性の障害であれば改善させるため、そして誤嚥性肺炎の経験がない健常人は、誤嚥性肺炎に多い嚥下障害を引き起こすような疾患にならないよう健康寿命を延ばすため、運動が必要となる。
この筋力訓練や有酸素運動は、低栄養の状態でただやみくもに実施すると効果が期待出来ないだけでなく、更に低栄養を進行させたり、逆に筋肉を分解して筋力や体力を悪化させる可能性がある。

充分な摂取エネルギーとタンパク質(1~1.5g/kg程度)を摂取し、適切な負荷で運動(筋力訓練、有酸素運動)すること、普段から活動的に過ごすことが大切である。
適切な筋力訓練や有酸素運動の負荷は専門家の指導を受けるのがよい。活動的に過ごすことに関しては、ベッドで過ごすことが多い人は座る時間を増やす、座っていることが多い人で歩ける人はウォーキングなどの運動を取り入れるのがよい。
予防を考える上では、高齢になってからの運動でも十分に効果はあるため「もう若くないから。」と諦めないでいただきたい。可能であれば、若いうちに運動習慣をつけるようにしていただくのが一番であろう。