誤嚥性肺炎を引き起こす原因の一つに低栄養がある。低栄養状態は高齢者の免疫機能を低下させるだけではなく、低栄養による筋力・体力の低下などが活動性を低下させ、活動性の低下が更に筋力・体力を低下させる悪循環を招く。筋力低下は嚥下機能に関わる筋力にも同様に起こるため、直接的に誤嚥性肺炎を起こす原因ともなる。
 低栄養状態に対しては、十分な栄養摂取が必要であるが、リハビリテーションの視点から栄養強化療法として病院で実際に行われていることを解説していく。

 病気になり入院した方に対して、いかに食事摂取量をふやしてもらうかを考え様々な工夫がなされている。その方の元々の自宅や施設での食事摂取量や味の好みなど様々であるため、その方に合わせた思考錯誤が主治医を始め、看護師・リハビリスタッフ・管理栄養士など多職種で行われている。栄養サポートチーム(NST)委員会もあり、他スタッフよりも専門的な知識を持ったスタッフで構成されたチームが介入することもある。
 病院の食事メニューは、常食や減塩食、糖尿病食など疾患に合わせて内容が多少異なる。カロリーに関しては、1200キロカロリーの食事を提供されている方は、朝昼晩3食の食事を10割摂取すると1200キロカロリーになる。食事の提供カロリーは、1200・1400・1600・1800・2000キロカロリーがあり、段階的で把握しやすくなっている。食事の摂取量は看護師を中心に毎食どの程度摂取しているかを主食○割/副食○割と評価しており、それをもとにどの程度の摂取カロリーになるかを把握している。毎食の食事摂取量がなかなか増えない方に関しては、味の好みの問題なのか、もしくは食事の形態の問題なのか、他に認知機能や疲労など要因があるのかをリハビリスタッフを中心に考察した上で、必要な方には栄養補助食品が提供される。
 栄養補助食品は非常に栄養強化において強い味方であり、低用量でも多くのカロリーを摂取するのに役立つ。具体的に使用されることが多い補助食品としては、「メイバランス」「メディミル」「プロッカゼリー」「大豆スープ」などがある。これらを本人の好みに合わせて食事の補助として提供していく。食事量が少ないうちは簡単に摂取が可能な補助食品を多めに提供し、食事量が少しずつ増えて必要カロリーが取れるようになってきた方は補助食品の割合を減らしていくのが一般的である。
 一つ大事なこととしては、上記のような様々な工夫がなされて提供されているのが、病院の食事であることを認識してほしい。病院食であるため、すごく美味しいものであるとは言えないかもしれないが、疾患の治癒や身体機能の向上を図り、早期の退院や社会復帰を目指すために提供されているものであるため、しっかりと食べていただきたい。栄養療法が当たり前になった今、病院では患者様のための食事を試行錯誤して提供している。
 余談であるが、数か月入院した経験から、病院食は個人的には美味しく食べることが出来た。