高齢者の誤嚥性肺炎の原因としては、頻度の高さから、脳梗塞が重要である。高齢者肺炎の約半数に脳梗塞病変が認められ、脳梗塞の範囲拡大に伴って誤嚥頻度の増加が認められている。脳梗塞のない健常高齢者では5%に肺炎が生じるのに対し、脳梗塞の既往がある高齢者では肺炎の発症頻度が約4倍になるとの報告もある。脳梗塞による嚥下反射の低下と咳反射低下が生じ、不顕性誤嚥と気管支・肺内の最近増殖が誘発され、肺炎が引き起こされる。


誤嚥性肺炎の原因である脳梗塞を予防するには、脳梗塞を引き起こす動脈硬化を防ぐことが大事である。動脈硬化は加齢変化であるが、そのリスクを高める因子として高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある。生活習慣病を早期発見・早期治療する2次予防に重点が置かれてきたが、現在では健康増進やそれら生活習慣病の発症予防としての1次予防からが大事であるとされている。
動脈硬化のリスク因子を列挙すると、脂質異常症・肥満(メダボリックシンドローム)・糖尿病・高血圧・慢性腎臓病・高尿酸血症・喫煙・加齢・性別・冠動脈疾患の既往・非心原性脳梗塞の既往・抹消動脈疾患がある。これら因子のうちいくつあてはまるだろうか。それぞれの細かい定義や説明は今回省くが、今一度、ご自分の健康診断の結果などを見返していただきたい。異常値を示し、診断基準にあてはまっていたら、早期にしっかり治療することがもちろん大切であるが、診断には至らないが予備軍であったり、正常値ぎりぎりの値である場合も少し気にかけていただけると発症予防につながるであろう。
このようにして、できるだけ早くから動脈硬化のリスクを減らすことが大切である。そのためには生活習慣の改善が必要である。具体的には、睡眠や食事などの生活を整え、運動の習慣を持ち、たばこを吸わないことが大切な生活習慣である。テレビなどでも当たり前に健康番組がある今、上記のような生活習慣の改善はみんなが知っていることであろう。その生活習慣の改善が動脈硬化を防ぎ、脳梗塞を防ぎ、将来の誤嚥性肺炎を防いで、健康寿命を延ばすことにつながることを再認識していただきたい。このことは、普段から私自身に言い聞かせていることであり、実践していることである。理学療法士として健康管理は大事であることを人一倍認識しているため、しっかりと訴えていきたい。
今後は具体的な食事内容や運動方法・量など各項目に関して詳しく解説していきたい。