動脈硬化のリスクとなる生活習慣病を防ぐためには食事療法が欠かせない。
一度心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化の病気になってしまった方は、繰り返さないために処方された薬剤をしっかり服用し、食事と運動を整える必要がある。食事を整えることは、血糖値や中性脂肪、血圧、体重の管理の基本になるため、食生活を見直し、動脈硬化のリスクをできるだけ小さくしよう。この食事療法について各疾患の詳細までは触れられないが、共通する概要の部分を解説していく。
リハビリテーション栄養では、食事での必要カロリーやタンパク質の摂取が大切であることは解説したが、生活習慣病を防ぐための食事は、もう少し細かい内容にこだわる必要がある。


① まず体重を適正にする:一般的にはBMIを22に近づけるようにすることが推奨されている。

② エネルギー量を適正にする:一般的に減量が必要な場合、体重1kgあたり軽い労作の人で25~30kcal、普通の労作の人で30~35kcal、重い労作の人で35~kcalを一日の摂取量とする。その上で体重が減っていくかをモニタリングしていく。
③ エネルギーの配分を適正にする:炭水化物50~60%、タンパク質25%、脂質20~30%とする。脂質は1gあたりのカロリーが多いので、脂質を減らすことで減量はスムーズになる。糖質を減らす低糖質ダイエットはあまり推奨できない。
④ 減らす物:ラードやバター、脂身が多いバラ肉やひき肉、ハムやソーセージ・ベーコンなどの加工肉、お菓子や果糖を含む清涼飲料を減らす、食塩1日6g未満にする、アルコールは1日25g(ビール350mL1本、日本酒1合)以下にする。
⑤ 増やす物:魚を食べてn-3系多価不飽和脂肪酸(EPA、DHA)を摂取、食物繊維の摂取、大豆・大豆製品、きのこ、野菜、海藻、こんにゃくなど。
これらは動脈硬化学会や高血圧学会、日本循環器学会、日本心臓リハビリテーション学会などの各種ガイドラインでも紹介されている内容であり、医学的エビデンスに基づいた内容となっている。
 2019年に発表されたAHA/ACCのガイドラインでは地中海式食,米国農務省(USDA)食などが推奨されている。しかし、日本人は伝統的な和食が身近であるため、日本動脈硬化学会では「日本食:The Japan Diet」を推奨している。The Japan Dietでは具体的な食事内容やメニューが紹介されているため、是非一読していただき、ご自分の食生活に取り入れていただきたい。他の国の食事と比較して日本食は、汁物や漬物等、塩分が過剰になりやすいという特徴があるため、日本食を減塩で食べることが推奨されている。